マスターテクニシャン File:24

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私にしかできないことを

垣根を超えて

その日も2台のNISSAN GT-Rが阪井さんの整備を待っていた。日産整備士が目指す難関資格の一つ、NISSAN GT-Rの整備資格を持っている阪井さん。しかし、彼はその資格取得者のみが着ることを許される専用の整備服は着ていない。「みんなと同じ仕事をしているんだから」と、周りと同じ整備服を選ぶ、そんな飾らない姿勢を貫いてきた。

「いろんなクルマをみんなと一緒に見ているのに、特別仕様は恥ずかしいんですよ。整備で頭を抱えているときは、新人も先輩も関係なく、ヒントをもらいに行きますから、みんなと同じです。

今のクルマは、全部つながっている。それぞれが制御しあっているんです。だから、どこかに不具合の現象が出ていても、いろんな可能性が考えられ、予想だにしないところが原因だったりするんです。整備士に経験が必要と言われるのは、そのパターンを知るためなんですね。

それでも、新型車がでれば、初めて見る不具合現象に頭を悩ませる。整備要領書とにらめっこし、一人で考え込んで視野が狭くなっていくこともあります。そんなときに、若手に話を聞きに行くんです。
そうすると、まったく違う角度からモノを見て、答えが返ってくる。同じような経験だと、同じような思考回路頭になってくるけれど、経験の浅い若手の思わぬ発言で解決方法が見つかることもあるんです。

今は、仕事の割り振りをするコントローラーの役割もあるので、若手と話すのはコミュニケーションも兼ねていますね。若手の得意不得意を見て、作業を割り振ったり、何かをアドバイスをしたり。
何かを教えるときも、改まったりせず、気軽に声をかけています。作業しているときに、『それ難しいやろ。こうすると、ラクになるんやでー』てな具合です。
いろんな人のいろんな知識をもらって、自分も誰かに教えて、を繰り返していくんです。 この仕事の魅力は、見た目以上にいろんなことができる、ということです。クルマと向かい合い、お客さまと向かい合い。その先には、たくさんのことがありますから」

できないことは、できるように

阪井さんの特技の中に、チェアキャブの修理がある。チェアキャブとは、車いすのまま乗り降りができる福祉車両だ。特殊な装備があるため、得意とする人はなかなかいない。

「チェアキャブは、車両の特性上、毎日、何度も使われるものです。使う頻度が高いので、思ったより早く傷んでしまう。ここは福祉車両を使っているところが多いエリアで、困って来店されるお客さまもたくさんいます。リフトの部分が上がらない、出てこないという症状ですね。

初めて修理を担当したときにはまったく情報がなかったので、いろんな方向から試行錯誤し、悩み、メーカーに何度も問い合わせをして、それでもわからないこともありました。
でも、このクルマを使われている人は、他のクルマで代えがきかないので、切実なんです。『何時に使うから、お願い!』と飛び込んでこられるんですよ。それに応えたい、絶対に直そう、と繰り返していくうちに、得意になってしまったんですね。私でなければ、誰も受けられないものがあるとすれば、できるように技を身につけるだけです」

『なんだか違う』を突き詰める

阪井さんの得意分野は、誰もが嫌がる難しい分野の音修理。職人気質の阪井さんは、その繊細な作業に真正面から挑む。

「昔と比べ、クルマはずっと静かな乗り物になりました。それで、パーツ同士が少し擦れたり、当たったりする運転中の小さい音がよく聞こえ、気になるんです。

そんなお客さまがいらっしゃったときは、まずは一緒に乗って『この音!』というのを共有します。その後、できるだけお預かりして、原因追究にかかります。なぜなら、音修理はなかなか昼間にできないものだから。工場の作業音や道路の音が邪魔になる、それぐらい繊細なものなんです。

そうして、音の出所がわかるまで、聞き続けます。後ろから聞こえていたはずの音が、実は前から出ていることも。原因を探すのは、『なんだか違う』という感覚を突き詰めていくことです。そうすることで、原因の形が見えてくる。細心の注意を払い、感覚を研ぎ澄ませてクルマに向かうんです」

クルマのことはすべておまかせください!
整備の内容をご説明する際には、わかりやすく、いろんな方向からご理解いただけるまでお話します。愛車のことを知っていただき、安心してお乗りいただけます。