マスターテクニシャン File:22

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『最新』を追い続ける

大切に、丁寧に、触れる

整備士歴16年目を迎える矢島さんが仕事の中で大切にしていることは「クルマの取扱い」だという。経験を積んだ整備士が、車両に触れることに慎重になる。その心の内を聞いた。

「整備のときに、おさえるポイントは『クルマの取扱い』。基本中の基本ですが、技術や作業にばかり目がいって忘れがちなことでもあります。
来店されるお客さまは、本当にクルマを大事にされている方ばかりです。その愛車を預かる私たちはお客さま以上に丁寧な扱いをしなくてはなりません。整備の最中もそうですし、仕上げの洗車ひとつとっても、そこに気配りが必要です。自分のクルマを大切に扱ってくれていると、お客さまに感じていただきたいと思っています。

その感想を教えてもらえるお客さまのアンケートハガキは、スタッフ全員で何度も読み返して、共有しています。お褒めの言葉も、厳しい指摘もありますが、クルマの扱いの配慮は全員が同じ気持ちでないといけませんから。

その気配りのためにも、私は整備に入る前にお客さまとの会話から、どういうところに気を使っていらっしゃるか、どういうことを求めていらっしゃるか、というのを探っていくようにしています。
同じ点検を受ける場合でも、今回は詳しく現状を知りたいのか、または修理を希望されているのか。同じ作業をしても、整備士が重視するポイントも変わってきます。なので、そういった情報はとても大事ですね。最終的には、お客さまに合わせた整備のアドバイスにもつながってきます」

NISSAN GT-R専属メカニックとして

矢島さんの整備服に入っているGT-Rのロゴは、専属メカニックの証。特別な知識と技術を持った者だけが、日産のフラッグシップモデルであるNISSAN GT-Rの整備を許される。

「NISSAN GT-R整備の資格は、本社から指名されて取得したものです。たくさんの整備士がいる中から選ばれたことはとても光栄でした。

資格取得にあたり、はじめにあったのは、日産の技術の塊であるフラッグシップモデルのシステムはどうなっているのか、というクルマ好きの純粋な興味。知らないことが身につき、やった分だけの知識を蓄えられる楽しさを感じながらやっていました。そうして進むうちに、このクルマを扱うことの重大さを感じ始めたんです。

日産のフラッグシップモデルとして、誇り高いNISSAN GT-R。整備する私もその精神を受け継ぐために、どのように技術を高めていくか、そしてお客さまとどのように接していくべきか、ということを常に考えながら進んでいます」

進化するクルマと向き合う

クルマの整備というと、どうも機械を直接いじるイメージが抜けない。スパナを持って、トンテンカンテン。それはひと昔前の話なのだ。

「クルマのシステムは、ほとんどが電子制御になってきているので、今はパソコンがないと仕事になりません。これは私が整備士をしてきたこの16年で大きく変わったところです。クルクルとレバーを回して窓を開けていた時代から、データを読んで点検し、電子機器の修理をしていく時代になりました。難解修理を探っていくのにも、電子制御の知識はなくてはなりません。

とはいえ、物理的な機械の技術も必要ですし、経験からの勘、人としての感覚、どれが欠けても偏った整備になってしまう。整備士はいろんな角度からアプローチしていくのです。

そして、常に新しい知識を追っていく必要があります。NISSAN GT-Rは毎年新型が出ますし、車種に限らず、電気自動車や新しいエンジンの新技術が次々に登場します。それをどんどん覚えていかなくてはならないですね。そこはマスターテクニシャンだけでなく、すべてのサービスマンが苦労するところで、とても力を注いでいます」

矢島さんの進む道は、止まることなく進化し続ける道。マスターテクニシャンとなった彼が、道を振り返り思うこととは?

「自分の手で修理できたときの達成感と、その延長線上でお客さまの力になれたと思えたときがこの仕事をしていて良かったと思える瞬間です。

整備士になりたてのころは、資格取得もやらされ感いっぱいでした。苦手な分野はなかったし、壁を感じなかった分、どれもつまずいてきたように思います。
苦しいこともありました。立ち止まる瞬間って、誰しもあると思うんです。波が落ち込んでいるときには、もう半年、もう1年、その先に何か見えるんじゃないかと思ってやってきました。今まで積み重ねてきたじゃないか、と自分に語りかけながら。
耐えることでつかめるものがある。経験上、そう信じています」

いきつくところ、クルマが好きだから頑張れてしまうと締めくくった彼は、新しい技術を追いかけ、今日もさらなる上を目指している。