
「先入観を持つな。自分を『無』にしてクルマ全体を診ろ!」――後輩の整備士たちの指導にあたる際、日下さんが必ず口にするセリフである。それは整備にとりかかる前に、今も日下さんが自らにかけ続けている声でもある。
「経験を重ねるにつれ、お客さまに問診したり、クルマをちょっと診た瞬間に『不具合の原因は多分あそこやな』という見当は当然つくようになります。しかし、そういった先入観をまず一度全部捨てて、自分を『無』の状態にして、クルマ全体を診ていくことが重要なのです。
クルマ全体を診るために使うのは、自分の全身。耳で音を聞き、鼻で匂いをかぎ、手で触ってみて振動を確認し、そして目で見る――それが全体を診るということ。そのうえで、テスターや診断機を使い、必要なプロセスをきちんと踏みながら不具合箇所を早く発見し、正確に整備をするのがプロの仕事です」

ガソリンや排気ガスの匂い、エンジンの振動具合――見て、触れて、かいで、クルマの声を聞き、全体を診る
日産では、そんな「プロの技量」を競う技術大会が毎年開催される。全国の販売店から選ばれた精鋭が集う整備士界の甲子園「全国日産サービス技術大会」。日下さんも数年前に出場し、全国一位の栄冠を勝ち取った。
「会社を代表して、フロントを含む3人チームの一員として出場させてもらいました。当日は、競技車両に実際に仕込まれたさまざまな問題を、短時間で解決することに加え、整備の結果をお客さまに説明する納車対応も審査されます。出場に向けて猛勉強をしましたし、そのかいあって、多くの技術や知識を身につけることができました。けれど、何より一番学んだのは、僕らの仕事は『チームの仕事』だということかもしれません。お客さまに信頼され、喜んでいただける仕事に仕上げるためには、チームとしての総合力が問われるのです。後輩をきちんと育て、いいチームをつくりたい――と、そのときから大きく意識が変わったように思います。そして、チームに貢献するためにも、自分自身まだまだ学び続けなければならない……と強く思うようになりました」

技術大会出場時にも使った愛用のTレンチ。「電動と違い、最後までこの一本で締められるので工具の持ち替え時間も省けます。秒単位でスピードを競う厳しい大会でした」
仕事場は後輩たちへの技術伝導の道場であるとともに、自分自身にとっての学びの場だと日下さんは語る。
「ちょっと手をとめて、全員集合!」――道場開講の合図である。日下さんのまわりに後輩たちが集まり、一台のクルマを取り囲む。
「『これは経験させたい』と思う不具合現象のあるクルマが入庫してきたときは、後輩たちを集めて現車を見せて問いかけます。『見てみ、何が悪いと思う?』と。実は、そうやって現場で後輩たちに教えていくことが、自分自身にとってもものすごい勉強になるのです」
そんな日下さんにとって、「仕事の喜び」を感じる瞬間とは?
「整備の仕事では、喜びの瞬間が二段階でやってきます。まずは、不具合箇所が見つかった瞬間。そして、その不具合を整備し、完ぺきに直ったことが確認できた瞬間。一台のクルマで二度うれしい。『仕事はめっちゃ楽しいもんや!』――それが僕のモットーです。そしてそれを、後輩たちにも教えていきたい――僕の使命であり、楽しみです」

オイル交換や点検で入庫した際には、クルマについての疑問や、不安を遠慮せずどうぞ僕らにぶつけてください。
クルマを直すだけでなく、クルマを元気にするためのアドバイスをするのも、整備士である僕らの仕事です。
たとえば、走行距離が少ない方のクルマは、バッテリーが放電するばかりなので、どうしてもバッテリーあがりが発生しがち。「クルマの長持ちのためにも、ちょっと遠出をしてみてください」と、先日もあるお客さまにアドバイスをしたところです。
僕ら整備士への「なぜ・なぜ・どうして?」質問はウェルカムです。
来店時はぜひお声かけください!



